甘やかな含み笑いが時折挟まっての、
何とも愉しげな声がする。


    どうしました?
    え? 何ですよう。
    ああ、笑ったらいけなかったですか?
    そうじゃあない?
    どっちなんですか、困ったお人ですねぇ。
    ………はいはい、
    痛くはしませんから、
    じっと大人しくしていて下さいね。
    そう、いい子でいて下さいまし。


甲高くもなく、胴間声でもない、
ちょっぴりクセのある伸びやかな声は、
低く響いて囁かれると、
より一層深みが増して、女泣かせなそれにも十分なり得るが。
丁寧な口調のまんま、
笑みを含んでの ほんのちょっぴり、
相手を撫でるような、甘やかすような口調になると、
たちまち暖かな包容力を増し。
そのくせ秘やかに娜な色香をも隠し持つ、
何とも蠱惑なそれと化す。


    何ですよう、そんなところをいじったりして。
    お悪戯
    (いた)しちゃあダメですってば。
    んん? 手の置きどころ、ですって?
    そうですねぇ、投げ出してたって構やしません。
    アタシが全部して差し上げますから、
    ええ、だから。
    そう。
    キュウゾウ殿は何〜んにもしなくていいんです。
    言ったでしょう?
    いい子でいて下さいまし…って。



くすすと微笑ったその声の、
何とも軽やかで、尚且つ叔やかな、
心くすぐるほどに温みを帯びた、やさしい響きであることか。
合間合間に、もう一人の短い声も立ってはいるらしいのだが、
あまり響かず、しかも短い声音だったりするので、
ほとんどそちらは聞き取れず。
ただ、合間がある以上は
“受け答え”をしている彼らなのだというのだけ、
何とか…辛うじて判るというところ。



    気持ちいいですか?
    そう、それは良かった。
    ここはどうです? んん?
    ふふふ、もう覚えてしまいましたもの。

    あ、あ、ごめんなさい。
    痛かったですか?
    うそ。ぴくって撥ねたじゃないですか。
    痛かったんでしょう? ごめんなさい。
    深く入れ過ぎたんですね。
    やあらかいトコだったですしね。
    もう やめときますか?
    ………ほ〜ら、手を放して下さいな。
    でないと続きが出来ません。
    ええ。
    もうちょっとだけ、ですよ?

    え? 何を笑ってるんだ?
    ふふ…、
    キュウゾウ殿の耳の形がきれいだなって。
    こんなときに気がついちゃったのが可笑しくて。
    いつも見えてなかったのかなって…。
    ささ、これで終しまいですよ。
    え? 眠くなっちゃいましたか?
    そうですね、そのまま眠っていいですよ。
    このままでいますから、好きなだけ休んで下さいな。
    暖かいですか? いい匂い?
    匂いはお揃いのはずですよ?
    キュウゾウ殿と同んなじ髪油しか、
    匂いが立つものは使ってませんもの。
    ………ほら、寝て下さいってば。
    都都逸でよければ唄ってあげますから。ね?



    ―――――― お侍 拍手お礼の十四、でした。


 *タイトルは、
  お膝枕での耳掃除…ということにでもしておきましょうかね。
  バレバレでしたか?
(笑)
  お風呂場にて洗髪中にしようかとも思ったのですが、
  それだと内容がもちょっと過激になるやもでしたので却下となりました。
   ex,良いと言うまで眸をつむってて下さいな、
     あ、あ、ダメですよう、
     痛い想いをするのはキュウゾウ殿のほうなんですよ?
     熱いですか?
     しばらくだけ、そう、辛抱して下さいませな、
     すぐに気持ち良くなりますからね? …などなどと。

  …つって、結局書いてるおバカです。
(笑)
  でもリキチさんチのお風呂でこんな声が立ったなら、
  村の衆は落ち着けなくなって、
  その次は…順番に聞き耳立てに来るかもですね。
(おいおい)


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